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Taka Kanai 6 フォロワー OfflineTaka Kanai
 始発電車は四時四十分頃でる。各線ともだいたい同時刻。そんな朝早くだと、さすがの大都会でも、電車が空いているだろうと思うと、これがさにあらず。始発電車は意外に混んでいる。それも通常の混み方が違うから乗ると面白い。
 始発の客は多種多様だ。まずは夜勤帰りの人。魚河岸あたりの人のか、普通の通勤客がいる。それに負けず劣らず目立つのは、水商売帰りの男女だ。水商売をしている人(これも夜勤帰りではある)と、水商売の客と両方が始発電車の客だ。これを呉越同舟というのか、自給自足というのかわからない。タクシーに乗らず、始発時刻まで飲んで待った連中だから、貧乏酒のみに決まっている。中にはご丁寧に着物姿の男性までいる。よせばいいのに、羽織を着ると誰もが「若旦那」になってしまう。
 仲良さそうなゲイカップルが気持ち仕合わせそうに肩寄せ眠っている。
 始発の座席に座っていると、すぐまえに、へべれけ泥酔状態のそんな男が、あたかも両手で釣り手につかまるかのようにして、電車の揺れにあわせ、後左右にゆうらゆうら揺れる。ときにはこちらの膝の上にくずおれるそうになる。膝の上に吐くかもしれない。
 こういう客には席を譲るに限る。
 それにしても少数の勤め人を除外して、どのようにして、たつきをたてているのか、想像できない人ばかりだ。東京の奇人変人せいぞろいの趣きが、始発電車車内に漂う。
 やがて太陽がかおをのぞかせる。夜の名残がいっきに消え失せる。ものずきたちめ、とお日さまが高笑いするかのように、酒場のホタルの時間から、朝のてんとうむしの世界へすばやくかわる。
 え? おまえはどうして始発のその世界を知っているのかって? それを訊いてはいけません。変人は変人仲間が好きなのです。
24/09/2020 10:25
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